2ヶ月余りを振り返って その3 「震災時の公演」 大地震のあった3月、そして4月の公演の案内を改めて手に取ってみる時間ができた。
東京では公演が中止になった劇場もあったようだが、多くの劇場で舞台があいたようだ。まだまだ強い余震が何度も続いた頃だし、本番最中は芝居を中断したりしなかったのだろうか?
何年か前に
新宿サザンシアターで
観劇中に地震があって、舞台正面の壁で照明機材の大きな影がグラングランと揺れ始めた。あの時は、芝居を中断する出演者は一人もなく、通路にまでいっぱいだった観客も冷静に芝居を見続けていたが。
さて、手元にある
無名塾の案内、昨年12月に出演者の
菅原あきさんから送られてきていた
「炎の人」の東京公演初日だが・・・、なんと3月11日! 思わず日時を確認したが、まさしく大地震の日で18:30開演となっている。中止せざるを得なかったのでは・・・? いやいや、いろいろなお客さんがいるもので、歩いてでも劇場にやってきたお客さんだっていたのでは?
劇団東演の
「ハムレット」(ベリャコーヴィッチ演出)も11日が初日! 客演していたPカンパニーの
内田龍磨さんから案内が届いていたが、そのあとに送られてきた4月27日初日のPカンパニー公演の案内に添えられた内田さんの手紙によると・・・、「ハムレット」は下北沢の
本多劇場で観客20人という状態で幕を開け、そのまま7日間の公演を終えました! とある。
他に送られてきた案内を見ると・・・
波咲まこさん出演の
「12twelve」は、3月19日が初日。元劇団四季のトップスターたちによる裁判員裁判を扱った題材で、ミュージカルでも単なるストレートプレイでもない新たな表現という。書き下ろしらしいが、果たして舞台はあいたのだろうか? 大勢のミュージカル・ファンたちがこの新しい舞台を待っていたに違いない。
その他、マリヴォー作品に客演してくれていた
五森大輔さん、元櫻花舎メンバーの
山岡竜生からと、いろいろな案内が届いていて・・・。でも、この時期どうしても積極的に劇場に出かける気持ちにはなれなかった。
案内を送ってくださった皆さまには本当に申し訳ないと思う。観に行きもせず、今さら何を言っているかと、お叱りがあちこちから飛んできそうな・・・。ごめんなさい!
そんななか、日本演出者協会から
「大震災支援に関する原稿募集」の案内が届いた。題名「いま、なにができるか。」または、「いま、わたしがおもうこと。」などで、400字以内。締め切りは4月18日だという。大地震発生からまだ一月しか経っていないときなのだ。未だ経験したことのない未曾有の惨事のまっただ中、この混乱のなか、演劇に「大震災支援に関する」何ができるのか?と、私は思った。
ところが、この大震災に真っ向からチャレンジしている演劇人がいた。
演劇評論家
村井健さんと会う機会があって、今月はこれ一本で良いからとチラシを渡された。
中津留章仁作・演出
「黄色い叫び」だ。

この作家の話は以前から村井さんに聞いていて大いに興味はあったが、どうやら今回の震災を前提にした芝居らしい。しかも初日は4月13日だ。稽古は当然、震災直後には始まっていたはずだ。何をやろうというのか? とにかく24日の最終回に新岳と2人で観に行くことにした。
パンフの作演出の挨拶文にはこう書かれている。
「こんな時期だけに公演を辞めるか、そこから考えてやると決断。それまで考えていた話を捨て去り、新しく物語を構築しなおした」という。
さらに、作演出はこう書いている。
「そもそも芝居自体、無駄な電力を使う訳で、やる意味がないものは辞めた方が良い。むしろ辞めてくれた方が有難い。そういったものをやられても、芝居の、演劇の品格が下がるだけだ。つまりこういう時だからこそ、作家の魂と、その真価が問われるのだ。望むところである。」
誰もが書ける言葉ではない。
芝居がはじまって、舞台はどうやら「今回の大震災から半年後」らしい。この設定にも意表をつかれた。休憩をはさんで2時間30分。始まりから最後まで観客を一時とも離さない。これまでの日本の芝居では観られない、つまり対立と葛藤がきっちり書かれた正統なドラマが構築されていた。
挨拶文の全文を掲載したいくらいだが、もう少しだけ抜粋しておこう。
「今回沢山の方々が被災し、お亡くなりになられたが、彼らを弔う気持ちと共に、生きている我々が今、彼らの分まで人間らしさを取り戻さなければならない。「生きる」ということの意味を知らねばならない。」
観てよかった! 7月にタイニイアリスで再演と聞いたが──。
(守輪咲良)----------------------------------------------------------------------
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テーマ : 演劇・劇団
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