守輪咲良活動日記No.15 俳優の正しい『我』~テレビドラマ「刑事一代」を観て ~
守輪咲良活動日記No.15 俳優の正しい『我』~テレビドラマ「刑事一代」を観て ~
俳優の正しい『我』 ~テレビドラマ「刑事一代」を観て~
昨夜、テレビドラマ「刑事一代」を観た。アメリカのアカデミー賞にもノミネートされ、国際的に活躍する俳優、渡辺謙さんの主演である。しかも昭和事件史のなかで、今も私たちの記憶に残る大きな事件、そしてその解決にかかわった実在の人物の話なのだ。テレビドラマはめったに観ないが、さすがに昨夜はテレビの前にしっかり陣取った。渡辺謙さんの存在感は勿論のことだが、犯人の妻役・余貴美子さんの演技に大きく惹きつけられた! 内面からしっかり創られた役の演技に目を見張った。日本の「映像」には世界レベルで確実に俳優が育っている。
亡くなった松田優作さん、緒方拳さんなどもそうだが、こういった素晴らしい俳優たちが持っている尋常じゃない集中力があって、その集中力の核になっている〈我〉というものがある。長いこと「メソード演技」を指導してきて、大きな壁になっているのが日本人の〈我〉の部分だ。感情解放だけで良い俳優は育たないと常々言ってきているが、クリエイターとしての〈我〉がしっかりしないことには舞台に立ち切れず、感情も解放にはならず、垂れ流しになりやすい。
一般に日本人は自分を主張することを良しとせず、家庭でも学校でも子どものころから自分の「我」を折るようにしつけをされて育つ。社会性を考えると、自分勝手や我がままはいけないことだと教わることは大切だけれど、同時に自分が正しいと思うことなどを主張する大切さも教わる必要があるはずだ。
他人に気をつかうことばかり教えられ、長いこと自分を押さえつけているうちに自分が何を感じ、本当はどうしたいのか、分からなくなっている人がたくさんいる。
演技指導の現場で、このことは大きな問題となる。具体的に「与えられた状況」のなかで自分がどう行動するのか、何を感じているのか・・・なかなか本当に本当のところで演技に取り組めない。自分をごまかしたり、状況から逃げたりしがちだ。また、相手役とのやりとりには相互作用、相互影響がある。
ワフタンゴフの言葉を引用しよう。
「自分の相手に対して、私たちは自分の〈我〉でもって、単に言葉や外見だけではなく、自分の全存在で行動する。この私の〈我〉の、相手役の〈我〉に対する働きかけを〈交流〉と呼ぶ」
「刑事一代」の撮影現場には、ワクワクするような素晴らしい俳優の〈我〉と〈集中力〉がみなぎっていたに違いない。今夜も後編を観る!
(守輪咲良)
守輪咲良と咲良舎の上演記録・ワークショップ等の詳しい情報はホームページ版「さくらの便り」へ。
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俳優の正しい『我』 ~テレビドラマ「刑事一代」を観て~
昨夜、テレビドラマ「刑事一代」を観た。アメリカのアカデミー賞にもノミネートされ、国際的に活躍する俳優、渡辺謙さんの主演である。しかも昭和事件史のなかで、今も私たちの記憶に残る大きな事件、そしてその解決にかかわった実在の人物の話なのだ。テレビドラマはめったに観ないが、さすがに昨夜はテレビの前にしっかり陣取った。渡辺謙さんの存在感は勿論のことだが、犯人の妻役・余貴美子さんの演技に大きく惹きつけられた! 内面からしっかり創られた役の演技に目を見張った。日本の「映像」には世界レベルで確実に俳優が育っている。
亡くなった松田優作さん、緒方拳さんなどもそうだが、こういった素晴らしい俳優たちが持っている尋常じゃない集中力があって、その集中力の核になっている〈我〉というものがある。長いこと「メソード演技」を指導してきて、大きな壁になっているのが日本人の〈我〉の部分だ。感情解放だけで良い俳優は育たないと常々言ってきているが、クリエイターとしての〈我〉がしっかりしないことには舞台に立ち切れず、感情も解放にはならず、垂れ流しになりやすい。
一般に日本人は自分を主張することを良しとせず、家庭でも学校でも子どものころから自分の「我」を折るようにしつけをされて育つ。社会性を考えると、自分勝手や我がままはいけないことだと教わることは大切だけれど、同時に自分が正しいと思うことなどを主張する大切さも教わる必要があるはずだ。
他人に気をつかうことばかり教えられ、長いこと自分を押さえつけているうちに自分が何を感じ、本当はどうしたいのか、分からなくなっている人がたくさんいる。
演技指導の現場で、このことは大きな問題となる。具体的に「与えられた状況」のなかで自分がどう行動するのか、何を感じているのか・・・なかなか本当に本当のところで演技に取り組めない。自分をごまかしたり、状況から逃げたりしがちだ。また、相手役とのやりとりには相互作用、相互影響がある。
ワフタンゴフの言葉を引用しよう。
「自分の相手に対して、私たちは自分の〈我〉でもって、単に言葉や外見だけではなく、自分の全存在で行動する。この私の〈我〉の、相手役の〈我〉に対する働きかけを〈交流〉と呼ぶ」
「刑事一代」の撮影現場には、ワクワクするような素晴らしい俳優の〈我〉と〈集中力〉がみなぎっていたに違いない。今夜も後編を観る!
(守輪咲良)
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